築35年の門の瓦が一部かけてしまい、その部分を修理いたしました。
瓦は一枚が割れてしまっても、全交換が必要ではなく、その一枚だけを新品に換えて使える、修理が容易でエコロジーな建材だと思います(形によりますが)。他の屋根材に比べても、単価は高いかもしれませんが、建築後の修理や点検等、長い期間で後のことを考えるとコストパフォーマンスはこちらに軍配が上がると思います。ホームページにも書いていますが、天然素材や昔から用いられてきた材料の中には、全交換せずに修理が可能なものが多くあり、これはその事例のひとつですね。
この門は先代さんが、婿養子に来る今の家主さんを迎えるために建てたのだそうで、色々な意味で思いの詰まった門です。小さな修理ですが、瓦屋さんが熱心に加工しています。これでこの屋根もまた長く持たせることができますね。
瓦のメンテナンス
されど気になる建物の金額の話
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「坪単価いくらですか?」
未だにこの質問がプロアマ問わずに建築の世界では多く聞かれます。
坪いくらというのは分かりやすい金額の検討の仕方のように見えて、実はとても曖昧です。たとえば同じ仕様の30坪の建物であっても、平面の形状により外壁の施工面積に差が出て、同じ金額で施工不可能であったり、建物の立地条件により金額の差があったりということは当たり前です。また、坪単価にどこまでの金額を含めて金額が提示されているかということは、詳しく話を進めてみないと分かりません。かなり曖昧なのです。
弊社で建てている建物の坪単価の質問を受けますが、弊社の場合でも、仕様や建て方により坪60万円台のものから100万円を超える物までかなりばらつきがあります。ネットや媒体等の「坪単価いくら」にかなり惑わされがちですが、一番重要なのは「何に重点を置いた家に住みたいか」だと思います。
たとえば、木の空間に重点を置いた家に住みたいと思うか、設備機器を重点に考えた家に住みたいと思うか等によっても、建物の金額は異なります。
自分が良いと思った建て方が、自分の思っている坪単価より高かった。よくあることと思います。ではその建て方で建てるのには総予算の中で、何に一番重きを置くのか、そしてそれを実現するにはどの大きさで、どんなバランスであれば建てられるのか。それらを考えることが本当は一番重要と思います。ただし、勿論限度はありますし、物にはきちんとした金額がありますから、それらを考えた上で無理な場合もありますが。
弊社ではあまり坪単価いくらという話はせずに、予算の中でどのような家をどのような立地条件の敷地に建てたいのかを聞き、可能な案をご提案させていただいております。坪単価の高い安いはあてになるようで、実は本当にあてにならない数字なので、「この仕様であれば坪いくらから」といった曖昧な金額の話は致しておりません。
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大工の技術で家を建てる
近年、大工の技能というものがおざなりにされすぎている部分があると思います。集成材等の人工材やプレカットの台頭による部分もあると思いますが、技能に関してあまりに考えられていない気がします。
当社では,天然乾燥の国産材や地域産材を使って家を建てていますが、材料を見て、加工し、組上げるにはどうしても人の手でないと無理な部分があります。ですから当社では大半の建物は手刻みの加工です。
木はその性質上どうしても、反りますし、曲がりますし、割れます。技術が発達してきていることもありプレカットを完全否定はしませんが、そうした材料を刻み、削り合わせ、組上げるにはどうしても手の技術は不可欠ですし、材を見る目がなくてはなりません。そうした大工の技能は、家を建てる上だけでなく、維持する上でも重要です。
「伝統構法」というものが脚光を浴びつつあります。伝統と言うと古くさく思う方もいるかもしれませんが、近年、継承されてきた大工の技能、知恵による木造の考え方が様々に検証され始めました。それにより、「伝統構法」が木という材の性質をふまえた、木を生かした構法であることが実証されてきています。
今、日本各地に築100年以上の木造建築が建っています。それらは何もされずにそこに残っていた訳ではなく、そうした技術により維持管理が行われてきた結果そこに建っているわけです。
また、木造で組上げたものを一度解体し、また別の場所に移築する等ができるのも、そうした技術がある上で成り立っているものだと思います。
住宅は建てて終わりではなく維持管理に手間がかかります。どんなに耐久性のある建物でも,手を加えられなくては、50年、100年、200年とは持ちません。手を加えられなくてはその時点で解体されゴミになってしまいます。家を長持ちさせるにも技術が必要です。
木を使った家には、作る・直せる・壊せる大工の技術が不可欠です。
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