近年、大工の技能というものがおざなりにされすぎている部分があると思います。集成材等の人工材やプレカットの台頭による部分もあると思いますが、技能に関してあまりに考えられていない気がします。
当社では,天然乾燥の国産材や地域産材を使って家を建てていますが、材料を見て、加工し、組上げるにはどうしても人の手でないと無理な部分があります。ですから当社では大半の建物は手刻みの加工です。
木はその性質上どうしても、反りますし、曲がりますし、割れます。技術が発達してきていることもありプレカットを完全否定はしませんが、そうした材料を刻み、削り合わせ、組上げるにはどうしても手の技術は不可欠ですし、材を見る目がなくてはなりません。そうした大工の技能は、家を建てる上だけでなく、維持する上でも重要です。
「伝統構法」というものが脚光を浴びつつあります。伝統と言うと古くさく思う方もいるかもしれませんが、近年、継承されてきた大工の技能、知恵による木造の考え方が様々に検証され始めました。それにより、「伝統構法」が木という材の性質をふまえた、木を生かした構法であることが実証されてきています。
今、日本各地に築100年以上の木造建築が建っています。それらは何もされずにそこに残っていた訳ではなく、そうした技術により維持管理が行われてきた結果そこに建っているわけです。
また、木造で組上げたものを一度解体し、また別の場所に移築する等ができるのも、そうした技術がある上で成り立っているものだと思います。
住宅は建てて終わりではなく維持管理に手間がかかります。どんなに耐久性のある建物でも,手を加えられなくては、50年、100年、200年とは持ちません。手を加えられなくてはその時点で解体されゴミになってしまいます。家を長持ちさせるにも技術が必要です。
木を使った家には、作る・直せる・壊せる大工の技術が不可欠です。